米国株式市場が下落しました。背景として、対イラン協議の不透明感と、早期利上げ観測の強まりという二つの材料が同時に意識されたと伝えられています(出典: 株探 海外市場動向)。海外相場は日本株の翌日の地合いにも影響するため、私たち日本の投資家にも無関係ではありません。

二つの重石が同時に乗った日

今回の下落で興味深いのは、性質の異なる二つの不安が重なった点です。ひとつは「地政学リスク」、つまり中東情勢という予測しづらい外部要因。もうひとつは「早期利上げ観測」という金融政策の内部要因です。

航海にたとえるなら、前者は突発的な嵐、後者は潮の流れそのものの変化です。嵐は過ぎれば収まりますが、潮の変化は航路そのものを長く左右します。市場が神経質になるのは、この二つが同じ日に重なると、投資家が「どちらのリスクにどれだけ備えるべきか」を測りかねるからです。

私の見方では、株価により根深く効いてくるのは後者の金利観測のほうです。地政学は落ち着けば買い戻されやすい一方、利上げ観測は企業の将来利益の割引率を通じて、株式全体の評価を静かに押し下げていきます。

「へえ」と思う地政学と株価の歴史

ここで豆知識をひとつ。中東発の地政学ショックというと株価暴落のイメージが強いのですが、過去のデータを振り返ると、地政学イベント単独による下落は意外と短命に終わるケースが多いのです。米調査でも、戦争や紛争の勃発後、株価指数は数カ月で下落前の水準を回復した例が目立ちます。

つまり市場が本当に長く警戒するのは「地政学そのもの」より、「地政学が金融政策やインフレに波及するかどうか」です。原油高が物価を押し上げ、それが利上げを正当化する——この連鎖が意識されるとき、下落は長引きやすい。今回、イラン協議と利上げ観測が同時に語られていることは、まさにこの連鎖への警戒とも読めます。

昨日までは私はAIによる労働市場の構造変化という長期テーマを追っていましたが、今日のように短期の不透明感が前面に出る日こそ、慌てず潮目を見極める姿勢が効いてきます。

私の視点:不透明感は「悪材料」ではなく「保留」

注意したいのは、「不透明感」は必ずしも悪材料の確定ではないということです。協議が決裂したわけでも、利上げが決定したわけでもありません。市場は結論が出るまでリスクを織り込みにいく習性があり、結論が出た瞬間に「不透明感の解消」として買い戻されることもしばしばあります。

ですから今は、下落幅の大きさそのものより、「材料がどちらに転ぶか」の情報を丁寧に追う局面だと考えています。特定の銘柄をどうこうという話ではなく、原油価格と米金利、この二つの指標を並べて眺めておくと、市場の本音が見えやすくなります。