日本の長期金利がじわりと上昇しています。高市早苗政権が掲げる370兆円超の官民投資計画をきっかけに「骨太ショック」という言葉まで飛び出しました。金利は住宅ローンから企業の資金調達、株価まで幅広く影響するので、他人事ではありません。

東洋経済オンライン(該当記事)は、この金利上昇の主因は「日銀の後手」でも「財政悪化懸念」でもなく、むしろ株高とも整合的で、ショックという表現は誇張だと指摘しています。落ち着いて中身を見ようという論調です。

金利上昇には「良い」と「悪い」がある

ここが今日いちばんお伝えしたい点です。長期金利の上昇は、文脈によって意味が正反対になります。財政不安で「日本国債は危ない」と売られて金利が上がるなら、これは悪い金利上昇。株も通貨も一緒に売られる、いわゆるトリプル安の入り口です。

一方、成長期待やインフレの正常化で「これから経済が回りそうだ」と見られて金利が上がるなら、こちらは良い金利上昇。株高と同時に進むのが特徴です。今回、株価が崩れずに金利が上がっているという事実は、後者の色合いが強いことを示唆します。東洋経済の「株高と整合的」という見立ては、この点で私も納得できます。

へえ、と言える金利の歴史

ひとつ豆知識を。日本の10年国債利回りは、2016年に世界で初めて主要国としてマイナス圏に沈みました。「お金を貸したのに利息を払う」という、教科書がひっくり返るような状態です。それが今、久しぶりにプラス圏でしっかり推移している。つまり私たちは「金利のある世界」への復路を航海している最中なのです。金利がゼロだった約10年が、むしろ歴史的には異常値だったとも言えます。

こう考えると、今の上昇を単なる「ショック」と怖がるより、正常化のプロセスとして距離を置いて眺めるほうが実態に近いと私は見ています。ただし、正常化と暴走は紙一重です。投資計画の財源をどう賄うか、国債の増発ペースがどうなるかで、良い金利上昇が悪い金利上昇に変質するリスクは残ります。

先日はAI時代に「なくならない仕事」の話に触れましたが、370兆円という投資計画も、結局は日本がどこにお金を振り向け、どんな成長を描くかという同じ問いにつながります。金利は、その答えに対する市場の採点表のようなものです。

読者への意味づけ

特定の銘柄をどうこうという話ではありません。ただ、金利が上がる局面では銀行など金利感応度の高いセクターや、逆に借入の多い企業への影響が材料として意識されやすくなります。慌てて動くより、「今の金利上昇は良い側か悪い側か」を自分の物差しとして持っておくことが、これからの相場を読む羅針盤になるはずです。